中之島パビリオンフェスティバル2025
大阪大学中之島芸術センター企画アニメーション展「アニマ・パーソナル」
[概要]
クリエイティブアイランド事業「中之島パビリオンフェスティバル2025」の一環として開催される本展覧会は、大阪・関西万博2025のテーマである「いのち」を芸術の観点から検討する。
正確には「いのち輝く未来社会のデザイン」と謳われるこの万博テーマは、一人一人のいのちを大切にするとしつつも、社会問題における諸問題の解決を目指し、基本的には「ソーシャルないのち」を見ているように思われる。ソーシャルないのちにおいては、個別的な一つ一つのいのちは比較可能な描像に置き換えられる。一人一人が生きる個別の世界を、理解を共有可能な範囲に落とし込み、世界を規定することで、つまり、いのちの等質性によって問題を普遍化し社会に還元でき、議論や解決を見出すことができる。
一方で、そこからこぼれ落ちた比較不可能ないのちは、社会に与しないため、存在し得ないものにされてしまう。そのような異質ないのちは、言い換えれば知覚できない「外部性」であり、それは一人一人に個別的に潜在している。つまり誰しもが身のうちに外部性をはらんで、絶えず少しの死と痛みを持っていると言えるだろう。
本来的な一人一人のいのちが持つ個別性や当事者性、異質性、潜在性をそのままに、いかに「パーソナルないのち」を転回していけるか。それこそが芸術の根本であり、創造の様式だ。
今回、中之島芸術センターでは榊原澄人、副島しのぶによる2名の作家によるアニメーション作品を提示する。例えば、榊原の《飯縄縁日》は振り返る度に仮面が移り変わるような日常に潜む不可思議な違和感を示し、副島の《私の横たわる内蔵》は物質(モノ)の物々しさや裏返る毛皮、毛皮の向こうに動かしようのない現実を反転するかのようだ。
個物と理念とが接続しながら切れる。個別と普遍の問題を無効にする。そのようなパーソナルないのち(=アニマ)を我々に吹き込んでくれるだろう。
※「パーソナル」は展覧会の打ち合わせ時に招待作家から発露した語であり、元々は各人の芸術制作性について表したものだ。これを展覧会の共通テーマへと拡大した。
令和7年大阪大学中之島芸術センター企画展「アニマ・パーソナル」
文責:中之島芸術センター 中村恭子
展覧会詳細チラシダウンロード→
[会 期]2025年5月10日(土曜日)〜5月24日(土曜日)月・祝休館
[イベント]2025年5月10日(土曜日)15:00~16:30 3階スタジオ ※詳細は下記
[入 場 料]無料
[時 間]10:30~17:00
[会 場]大阪大学中之島芸術センター
〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4丁目3−53
大阪大学中之島芸術センター4階展示室
[主 催]大阪大学中之島芸術センター
[協 力]Art Space Kimura ASK? (木邑芳幸)
[問合せ先]secretary.art@ml.office.osaka-u.ac.jp (大阪大学中之島芸術センター事務局)
kyoko.art@osaka-u.ac.jp (大阪大学中之島芸術センター 中村恭子)
[出品作家]
本展出品作家は両名とも大阪万博のEU連合が企画するアニメーションアーティストのレジデンスに参画しています:EU-JAPAN ANIMATION RESIDENCY
榊原澄人 http://sumitosakakibara.com/
1980年生まれ。
北海道浦幌町出身。長野県在住。幼少を北海道十勝で過ごす。15歳で渡英後、文化庁海外派遣生を経て、Royal College of Art(英国王立芸術大学院大学)/MA Animation科を卒業。2006年La maison des auteurs (アングレーム市)、2007年韓国Sai Comicsのアーティストレジデンスを経て、現在長野を拠点に作品を制作している。主な受賞歴に平成17年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞(2006)、オタワ国際漫アニメ映画祭ノンナラティブグランプリ(2022)など多数。
榊原澄人《飯縄縁日》アニメーション,11分33秒,2021
副島しのぶ https://www.shinobusoejima.com/
美術家・アニメーション作家。立体アニメーションの技法を使った短編映画や映像、写真、立体作品を制作。アジアの民間伝承や民族文化のリサーチを通じて、影と光、死と生など対立し合うもの同士の均衡や狭間をテーマにしたナラティブな映像表現を試みる。主な受賞歴に第 68 回オーバーハウゼン国際短編映画祭 エキュメニカル審査員によるスペシャルメンション賞、第 22 回 文化庁メディア芸術祭 審査員推薦作品、アートアワードトーキョー丸の内 2018 木村絵理子賞など、国内外の映画祭で受賞、展覧会で発表。東京藝術大学映像研究科博士課程後期在籍。
副島しのぶ《私の横たわる内蔵》アニメーション,11分,2024
[トークイベント情報]
「パーソナルないのち」について、作家と様々な研究者とがクロストークを行います。
[概 要]
アニメーション制作における時間性や物質性、リアリティの個別性と普遍性などの問題をめぐり「いのち」にまつわる議論を呼び込んでみる。
[登壇者]
榊原澄人 (本展招待映像作家)
副島しのぶ (本展招待映像作家)
伊東信宏 (音楽学・大阪大学教授)
郡司ペギオ幸夫 (天然知能研究・早稲田大学教授)
進行:中村恭子(日本画家・大阪大学准教授)
[中之島パビリオンフェスティバルについて]
中之島パビリオンフェスティバル2025とは、中之島に点在する美術館や科学館、コンサートホールなどの世界に誇れる文化施設や、島内の各地で開催される、水辺やオフィスエリアなどのエリア環境を活かしたイベントを巡りながら、新しい学びや発見が広がるフェスティバルです。
中之島の学術芸術の素敵な文化と「島」という特別で魅力的なエリア環境を体感しながら、中之島の魅力を隅々まで満喫しましょう!
https://www.nakanoshima-pf.jp/
[クリエイティブアイランド中之島]https://nakanoshimalab.jp/